かーたんゆあは王都キィンベルに到着した。
王都キィンベルの軍司令部前に着くと、なにやら騒動が起きていた。
屋敷の使用人たちが副団長と話している。
「では、君たちの主については引き続き、軍司令部のほうで治療させよう。命に別状がなくてよかったな。」
「ありがとうございました。副団長さま。本当になんとお礼を言ったらいいのか。」
「王国軍の皆さんが駆けつけてくださらなければ今頃どうなっていたことか。」
副団長が使用人たちを励ます。
「よくぞその場を動かずにこらえてくれた。混乱して動き回っていればあっという間に魔物の餌食になっていただろう。」
「ええ、お屋敷が墜落した時の騒ぎで命を落とした仲間もいます。私たちももう駄目だと思いました。」
ひとりの使用人が、分厚い本を腰元から取り出す。
「でもその時、時の指針書に書かれていた内容を思い出したんです。何があってもかがり火をたいて主を守り、苦難を耐え抜け、と。」
「お導きの通りに従ったから救われたのです。時の指針書は、私たちエテーネ国民の希望の光そのものですわ。」
となりの使用人も話しだす。
「私の指針書にはこう書かれています。仲間と共にあれば必ず再出発できると。」
副団長が話をまとめる。
「うむ、主の回復を信じていたまえ。意識が戻り次第、追って連絡させよう。」
「さあ、君たちも休息をとるがいい。」
使用人たちは、深々とお辞儀をして去っていった。
副団長がかーたんゆあの姿に気づく。
「む?旅人かね?ここから先は軍の施設になっていて、許可のないものは立ち入ることが出来ないのだ。」
「私はセオドルト。エテーネ王国軍の副団長を努めている。何か用件があるならばここで聞こう。」
かーたんゆあは、ラゴウ隊長から報告書を預かってきたことをセオドルトに話した。
「なるほど、そうか。わざわざ旅人に託すというのは何か火急の知らせかもしれないな。」
「本来なら軍団長が受け取るべきものだが、今は作戦行動中でお留守にされている。その報告書は代理で私が受け取ろう。」
かーたんゆあは、セオドルトにラゴウ隊長の報告書を渡した。
「うむ、よくぞ届けてくれた。これは由々しき事態だな。」
「浮島の墜落事故はドミネウス邸だけではない。同じ時期に別の浮島も全く同じ被害にあったのだ。」
「この一連の事故が、異形獣という恐ろしい魔物の仕業だとするなら、無視することは出来ないな。」
「しかし、こんなことは時の指針書にも書かれていなかったはずだが?」
「ああ、旅人の君は知らないだろうな。先程の侍女たちや王都の人々が大きな書物を腰元にたずさえていただろう。」
「あれはすべてのエテーネの国民に1冊ずつ配布される時の指針書と呼ばれるものだ。」
「エテーネ王国は、時見の箱という装置を使い、近い未来を予見することで今日の繁栄を築き上げてきた。」
「国王は未来視の結果を繁栄した、人生において選択すべき行動を時の指針書に記して国民に配布する。」
「エテーネの国民は指針書に記されている通りに行動すれば、よりよい未来が約束されるのだ。」
「先程の侍女たちを見ればわかる通りにな。」
「さて、報告書の件だが、軍団長が戻れば君に詳しい話を聞くことになるかもしれん。」
「しばらくの間、王都に滞在してもらいたい。ただし、この件はくれぐれも内密に。国民に大きな混乱を与えかねんからな。」
「王都南門の近くに宿屋がある。そこに君の部屋を用意させよう。旅の疲れをゆっくり癒やしていってくれ。」
かーたんゆあは宿屋で受付をする。
「やあ、いらっしゃい。王都キィンベルの宿屋へようこそ。」
「ああ、あんたがかーたんゆあさんかい。副団長さんから話は聞いてるよ。今夜はゆっくりしていくといい。」
「そうそう、あんたラッキーだぞ。ちょうどこれから踊り子や曲芸師による盛大なショーが開かれるところなんだ。」
「もうお客さんも集まってる頃だろう。向かって左に酒場への入り口がある。ぜひステージを楽しんでってくれ。」
かーたんゆあはショーを鑑賞した。
ショーも終盤に差し掛かる。
「さーて、ここでとっておきのサプライズ。うるわしきスペシャルゲストのご登場だ。」
「本日、待望の復帰公演。月夜に咲いたラウラの花。エテーネの歌姫、シャンテ!」
ステージに黒髪の女性が登場した。
届け、この思い。響け、皆さんの胸に。 今の気持ちを歌にしました。
それでは聴いて下さい。酒場の皆さんに捧げる歌。
シャンテが歌い始める。
ひどいオンチだ。
「なんだ?これは!前と全然違うじゃないか。頭がガンガンする。おえ。」
観客が耳を塞いで苦しみだし、次々と逃げ出していく。
シャンテは不思議そうな顔をして歌うのをやめた。
あれ?待って、行かないで。
酔った客がシャンテに襲いかかる。
「おい、お嬢ちゃん。よくもひどい歌を聞かせてくれたな!」
シャンテが側にいたかーたんゆあに助けを求める。
酔った客はかーたんゆあを見てかなわないと思ったのか、ぶつくさ言いながら帰っていった。
シャンテがかーたんゆあにお礼を言う。
かっこいい!あなたのお名前は?かーたんゆあさんね。助けてくれてありがとう。
ぜひお礼をさせてほしいわ。どんなことなら喜んでもらえるかしら?
そうだわ、ぜひうちへ遊びに来て。ここから東にゼフの店っていう錬金術のお店があって、私そこに住んでるの。 たいしたおもてなしは出来ないけど、あなたのために一曲歌わせて欲しいな。
絶対遊びに来てね。
宿屋モッキンがシャンテを叱る。
「おい、シャンテ!今のひどい歌はなんなんだ?」
「なんてこったい、今日はもう店じまいだ。早いとこ出ていってくれ!」
シャンテは逃げ帰った。 宿屋モッキンが時の指針書を見ながら落ち込んでいる。
「とほほ、やっちまったよ。曲芸師や踊り子で客をもてなせ、ただし誰にも歌わせてはならない。」
「なのにあの子にどうしてもと頼まれて、ついついステージに上げちまった。これじゃ、うちの評判はガタ落ちだ。」
「いや、それ以前に、こんな騒ぎを起こしたら指針監督官に目をつけられちまうかもしれないぞ。」
宿屋モッキンは時の指針書を腰元に戻す。
「ああ、シャンテは王都で人気の歌姫でな。半年ほど前、ある事件に巻き込まれたせいで療養することになり、活動休止していたんだが。」
「ようやく活動再開と思いきや、ひどい歌声だったよなあ。話してても以前よりボーッとした感じだったし。」
「あんた、あの子に錬金術の、ゼフの店に来るよう誘われてたな。」
「もし行くつもりなら中央広場から東に歩いて、階段を上がった通りにあるぞ。薬びんの看板を目印にして探すといい。」
「そんでさ、シャンテに会ったら、悪いこと言わないからもう人前で歌うのはやめたほうがいいよって伝えてくれないかい。」
かーたんゆあはその日、宿屋に泊まり、夜が明けてからシャンテに会うためにゼフの店へ行った。
受付にゼフがいたので話しかけてみる。
え?シャンテですか?確かに彼女はこの店にいますが。
すると、リンカという女性の錬金術師がかーたんゆあの側へやって来た。
おい、そこのお前。
あたしはリンカ。この店で働いている錬金術師で、お前が探しているシャンテの姉さ。
でだ、うちの妹に何の用だ?お前みたいな旅人がどこでどうやってシャンテと知り会ったっていうんだよ!
リンカは何故か喧嘩腰だ。
よくいるんだよな、お前みたいなの。シャンテの歌に惚れ込んで押しかけてくる図々しくって迷惑な奴がさ。 知り合いを装ってあいつに近づこうってんなら、このあたしがタダじゃおかないぜ!
ゼフがリンカを叱る。
いい加減にしなさい、失礼でしょう。
ゼフの側には、リスのようなピンクの魔物がいる。胸には赤い宝石が埋め込まれている。 チュラリスという名前の魔物は、喋ることが出来るようだ。
そうだ、そうだ。リンカは失礼千万だぞ!お客様を困らせたら駄目なの!
なんだよ。チュラリスは関係ないだろ。ていうか、裏に隠れてろって。もしこんな時にあいつらが来たら・・・
その時、店のドアが勢いよく開いた。
チッ、ウワサをすれば・・・
黒い制服を来た女性が入ってくる。
邪魔するぞ、エテーネ王国軍、特務機関所属、指針監督官のベルマである。
ベルマの姿を見たチュラリスがゼフにしがみついて震えている。
またですか、ベルマさん。
ベルマが高圧的に言う。
おや、二人ともおそろいとは、ちょうどよかった。その後、我々の指導には従ってもらえたかな?
チュラリスの方をチラリと見るベルマ。
ふむ、どうやらまだのようだ。貴様ら錬金術師がもつ指針書には、はっきりと書かれているはずだが?すべての魔法生物を処分せよ、と。
このエテーネ王国は、時の指針書には従うことで今日までの輝かしい栄光を築き上げ、豊かな暮らしを実現してきたのだ。国民ならば子供でさえ理解していることだが、わかっているのか?
拒否すれば国家への反逆とみなすぞ。 それとも、厳しいお仕置きが必要かな?
リンカが啖呵を切る。
は、やってみやがれ!あたしたちは権力や脅しには屈しない。錬金術師としてのプライドにかけてね!
ゼフが言う。
荒事はよしましょう。今はお客さんが来ているんです。無関係の人を巻き込むおつもりですか?
ベルマがかーたんゆあのほうを見る。
ち、よそ者か。時の指針書に記載のない者と関わるのはいささか面倒だな。
いいだろう。今日のところは退いてやる。だが私の指針書は告げているぞ。次こそは使命を果たすべし、と。
すべての魔法生物を処分しろ。貴様らの賢明な判断を期待しているぞ。
ベルマが笑いながら帰っていく。 それを見届けたゼフがかーたんゆあに言う。
驚かせてしまってすみませんね。旅人のあなたには何がなんだかわからなかったでしょう。
さっきの軍人たちは、指針監督官といって、時の指針書に書かれた内容に従わない者を取り締まる立場にあるんです。
ここ最近、軍の権威をかさに着て王都で幅を利かせている連中なんですよ。以前はこんなことはなかったんですが。
リンカが口をはさむ。
これでわかったろ?今この店は面倒なことになってんだ。お前の相手なんかしてられないんだ。
シャンテが2階から階下の様子をうかがっている。シャンテの足元には、小さな魔法生物がいる。
姉さん、あの女の人達は帰ったの?私たち、もう下に降りてもいい?
その時、シャンテがかーたんゆあの姿を見つける。
かーたんゆあさん!?待っててね。今そっちに行くから。
シャンテが慌てて階段を降りてきた。
リンカが驚く。
え?なんだよシャンテ。こいつマジで知り合いなのか?
シャンテがニッコリと頷く。
かーたんゆあさんは私の恩人なの。酔っぱらいに絡まれてたのを助けてくれて、すっごくかっこよかったんだから。
リンカがかーたんゆあに言う。
なんだ、こいつが例の恩人だったのかよ。そういうことなら早く言えっての。
追い返そうとして悪かったな。あたし妹のことになると、ついついマジになっちまってさ。
酒場では本当にありがとう。遊びに来てくれて、とってもうれしいわ。
かーたんゆあは、宿屋のモッキンからの伝言を伝えた。
え?宿屋のモッキンさんから伝言?
そう、たしかに迷惑かけちゃったものね。言われた通り、もうこれ以上人前で歌わないほうがいいかも。
リンカが慰める。
そんな落ち込むことないぞ、シャンテ。他の連中には理解できなくたって、あたしはあんたの歌が好きだよ。
ありがとう、姉さん。でも出来ることなら多くの人に自分の歌を届けたいの。 私は歌うことが本当に好きよ。この歌でいつかみんなを幸せにしたい。それが歌姫としての使命だと思うから。
リンカがシャンテの手を握る。
気持ちはわかるし、お前の願いならなんだって叶えてやりたいけど、今は家でおとなしくしててくれよ。
お前は大怪我から回復したばかりで、まだまだ本調子じゃないろ?それに今は指針監督官がうろついている。
そうね、あの人達、ちょっと怖いわ。コポも部屋で怯えていたもの。
コポというのは、シャンテの足元にいる緑色の魔法生物の名前のようだ。 コポにも胸に赤い宝石が埋め込まれている。
チュラリスとコポは、錬金術によって生み出された魔法生物なんです。
一見すると魔物のように見えますが、魔法生物はその証として身体のどこかに宝石を宿しているので、すぐにわかるんですよ。
チュラリスは私の助手として、コポはシャンテの話し相手として、それぞれ役立ってくれています。
あたしたちにとって魔法生物は大切な家族なんだ。
こいつらを処分しろだなんてとんでもない。たとえ指針書に書いてあることだとしても、あたし達は絶対に従わないよ。
んー、だけど何か忘れてるような・・あ!ジョニールだよ。あいつのことすっかり忘れてた!
ちょっとヤバイな、これ。あーどうしよう。
ああ、ジョニールってのは、あたしが錬成した魔法生物で、いつも仕事を手伝ってくれてる奴なんだ。
そのジョニールが練金素材の仕入れに行ったっきり、まだ帰ってきてないんだよ。 指針監督官に見つかったら大事だぞ。 すぐに迎えに行ってやりたいけど、あたしもベルマには目をつけられてるし、まいったな。
そうだ、お前なら指針監督官の監視も気にしなくていいだろ。あたしの代わりにジョニールを迎えに行ってくれないか?
ジョニールは中央広場の東側に建つ雑貨屋にいるはずさ。あいつを見つけたらすぐに店に戻るよう伝えてほしい。
かーたんゆあはジョニールところへ向かった。 雑貨屋に着くと、部屋の中から話し声が聞こえてきた。
「だから何度言えばわかるんだよ!ネジガラミの根は品切れ。ないものは渡せない。」
「そちらこそ何度言えば理解できるので?
品切れならば仕入れればいいだけの話です。
それが雑貨屋の職務ってもんでしょうに。」
部屋の中に入ると、雑貨屋の店主とジョニールが睨み合っている。
ジョニールの身体は小さく、ふわふわと空中に浮かんでいる。
いいですか。リンカ様は有能な執事であるこのジョニールを信頼してお使いを命じてくださった訳ですよ。 手ぶらで帰れば執事の誇りがすたるってもんです。
さあ、出すもの出してもらいましょうか。
雑貨屋の店主がかーたんゆあに気づき声をかける。
「ああ、すみませんね、お客さん。ちょいと取込中でして。」
かーたんゆあはジョニールに話しかける。
はい?ジョニールは確かに私のことですが。
なんですと?リンカ様が帰ってこいと?しかし、任務を途中放棄するなどもってのほか。何故ならワタクシ有能な執事ですから。
雑貨屋の店主はブルーノーという名前のようだ。
「俺はこおの店主のブルーノー。ジョニールはうちの常連だし、品物を売りたいのはやまやまなんだが。」
「注文の素材、ネジガラミの根は品切れでね。ちょいとバントリユ地方まで取りに行かなきゃならないんですよ。」
「だが、俺の指針書に書いてあるんです。バントリユ地方に行っては行けないってね。」
ジョニールが怒り出す。
そっちがその気ならこちらとしても素材が手に入るまではテコでも動きませんよ。何故ならワタクシ有能な執事ですから!
ブルーノーが困っていたので、かーたんゆあが代わりにバントリユ地方に行ってネジガラミの根を採ってきた。
ジョニールは主人公からネジガラミの根を奪い取り、リンカの所へ帰っていった。
「ネジガラミの根は滋養強壮のほか、物忘れなんかにもよく効く薬を錬成するための素材でしてね。」
「近頃はリンカに頼まれたジョニールがちょくちょく買いに来るんだが。シャンテちゃん、そんなに悪いのかねぇ。」
かーたんゆあがゼブの店に戻る途中、指針監督官ベルマに出会った。
この店の魔法生物はあれで全部か。何を驚いた顔をしている?
貴様のことはずっと監視させていたのだぞ。 まさか気付かなかったのか?鈍い奴め。時の指針書は必ず遵守されるべきものだ。誰ひとりとして逃れられはしない。 だがエテーネの国民でない貴様は別だ。
このまま錬金術師たちとの関わりを絶てば特に咎めはしない。 我々はそろそろしびれを切らしている。邪魔はしてくれるなよ。
そう言うと、ベルマは立ち去っていった。 ゼフの家に入ると、ジョニールが戻ってきている。
いやはや。雑貨屋の主人が相変わらずの石頭でして、苦労させられましたのですよ。
しかし、この有能執事ジョニールにかかればネジガラミの根のひと束やふた束、チョロいもんでございますからね。
リンカがねぎらいの言葉をかける。
よしよし、おつかいご苦労さん。とにかくベルマに見つからなくてよかったな。
かーたんゆあに気づく。
お、かーたんゆあ、ありがとな。ジョニールのこと手伝ってくれたんだろ?お前っていいやつだな。
シャンテも隣にいる。
かーたんゆあさんは錬金術って見たことある?これから姉さんが薬を作ってくれるの。とってもかっこいいのよ。
リンカがネジガラミの根を使ってシャンテのための薬を作った。
シャンテが出来上がった薬を飲む。
この薬用茶は心をリラックスさせて、眠った記憶を呼び戻す効果があるって姉さんが毎日作ってくれるの。
ええ、私、昔の記憶がないの。半年くらい前、はるか南の海洋都市リンジャハルで起こった大災害に巻き込まれて大怪我をしたらしいわ。
奇跡的に回復して怪我は治ったんだけど、大災害にあうより前のことは覚えてないの。
だから王都の歌姫って呼ばれても、その頃の記憶も歌い方もすべてがボンヤリしてわからないのよ。
酒場のステージで歌えば昔のカンを取り戻せるかなって思ったんだけど、それも迷惑かけちゃったし。
リンカがシャンテの肩に手をのせ、優しく語りかける。
誰がなんと言おうと関係ないさ。もしもお前を悪く言う奴がいたら、あたしが錬金釜でぶん殴ってやるよ。
お前はあたしにとって最高の歌姫だ。だからそんな顔するなよ。いつもみたいに明るく笑ってくれ、な?
ありがとう、姉さん。姉さんはいつだって味方になってくれるの。だから頑張ろうって思えるの。
私負けない。元の歌声に戻る日まで、絶対くじけないわ。
それを聞いたリンカは悲しい顔をしている。
気持ちはわかるけど無理するな。ありのままのお前でいいじゃないか。
あたしはいつまでもこうして二人で仲良く暮らしていければそれだけで充分幸せなんだから。
二人は部屋に戻った。 そこへゼフがやってくる。
本当に仲のいい姉妹でしょう?二人はいつも一緒なんです。
彼女たちの父親アルテオは、不慮の事故で5年前に亡くなりました。 残された肉親はお互いだけ。リンカが妹に過保護になるのも無理のない話なんですよ。
この国には王立アルケミアという国家主導で練金技術の開発を行う特殊な研究施設がありましてね。 アルテオは元王立アルケミア所属の錬金術師で、かつての私の同僚であり、親しい友人でした。 その縁で姉妹の身元を引き受けたんです。
魔法生物の研究が専門だったアルテオは、娘のリンカにその秘技を伝授しました。
コポやジョニールはリンカが練金したんです。彼女には素晴らしい才能がある。 父親のような良い錬金術師になれるでしょう。
コポがかーたんゆあの足元にやって来て秘密の伝言があるという。
シャンテからお願い。お茶を飲み終えたら、あとで部屋まで来てちょうだい。
かーたんゆあは2階にあるシャンテの部屋に行った。
いらっしゃい、かーたんゆあさん。来てくれてありがとう。どうしても二人で話したかったの。
さっき姉さんが言ってたでしょう?記憶を失って昔の歌い方が思い出せなくても、私はありのままでいいんだって。 姉さんはああ言ってくれるけど、私、このまま姉さんの優しさに甘えてちゃいけないと思うのよ。
今すぐに記憶を取り戻すのが難しいなら、せめてもっと上手に歌えるようになりたい。それが私の本当の気持ち。
それでね、この間、部屋を掃除してたら偶然こんなものをみつけたのよ。 戸棚の奥にしまわれてたんだけど、これ、記憶を失う前の私が書いた日記帳みたいなの。 読んでみたらね、ある日の日記にこんなことが書かれていたのよ。
#昨日は少し歌いすぎちゃったみたい。
#ラウラリエの丘で、ラウラのみつを飲んで、かれた声を治さなくちゃ。
ね、ラウラのみつですって。きっと丘にラウラの花が咲いているのね。 私もみつを飲めば元の歌声に戻れるかも。
だけど一人で王都の外に行くのは心細いから、かーたんゆあさんに手伝ってもらえたらなって思ったの。
お願い、かーたんゆあさん。私とラウラリエの丘へラウラのみつを集めに行ってくれないかな。
かーたんゆあとシャンテは、ラウラリエの丘へ向かった。
このお話の続きはここから見るッキュ!
エピソード26-4 5000年の旅路 遙かなる故郷へ Ver.4.0へ
こちらの文章は
ドラゴンクエストX(DQ10)ネタバレストーリーまとめ 様より
お借りさせていただきました。